【行政書士とは?】行政書士を目指そうか迷っているあなたに教えます。行政書士とは簡単に言うと法的書類作成の専門国家資格です

行政書士という資格、聞いたことはあるけど、どんな資格か知りたい。資格予備校のサイトだけでは分かりにくいので、実際に行政書士として働いている人の生の声を聴きたい。司法書士と行政書士ってどう違うんだろう・・・このようなご質問にお答えします。

まずは結論的な部分からお伝えします。

☑行政書士とは、簡単に言うと法的書類作成の専門国家資格です。ただし、他法令(司法書士法、税理士法、社労士法、弁理士法など)で制限がかかっている分野を除きます。

「もう少し詳しい内容を教えてよ・・・(^^;」

という人のために、このコラムでは次の内容をお伝えします。

☑このコラムの信頼性

みなさんこんにちは。行政書士の井ノ上剛(ごう)と申します。僕は23歳の時に行政書士に合格してすぐに士業事務所で働き始めました。このコラムを書いている2021年時点で45歳。現在職員31名の合同法務事務所の代表をしています。誰よりも行政書士を愛し、理解しています。

☑「行政書士とはどんな資格か」を調べている方へメッセージ

1975年生まれの僕は就職超氷河期世代です。せっかく大学を出たのに希望する企業へ就職できず途方に暮れていたとき、フラフラっと立ち寄った大学生協で行政書士の資格案内パンフレットに出会いました。

当時の僕は、今の皆さんと同じように、「行政書士とは?」、「行政書士と司法書士の違いは?」等まったく分からない状態でした。(今みたいに簡単にググるということができない時代でしたし)

結果として1回の受験で合格できましたが、今回コラムで執筆することは1ミリも知らずに受験しました。今思い返せば、よくチャレンジしようと思ったもんです。若いって怖いです。

このコラムは22年前の自分に向けて書いています(笑)。このコラムを読んでいただけると、「行政書士とは?行政書士を簡単に言うと?司法書士との違いは?」などの疑問が解けると思います。

これらの問いに即答できない状態で行政書士を目指すのは、エベレストと富士山の違いを知らずに登山するようなものです。皆さんが行政書士のことをイメージしやすいように、なるべく分かりやすく執筆したいと思います。それでは始めましょう。

行政書士の資格の歴史(結構歴史のある国家資格です)

結論を先に言うと、ざっくり150年くらいの歴史のある、老舗の国家資格です。150年ってすごいですよね。西暦で言うと1872年(明治5年)です。明治維新から5年後に行政書士の前身である「代書人(だいしょにん)制度」というものがスタートしました。

ということでまずは「代書人」の解説から。

今でこそ、日本国民の識字率(しきじりつ)は100%に近い状態ですが、明治維新直後の識字率は今と比べると相当に低かったわけです。ちなみに識字率というのは、文字を読んで書いて理解する能力を、国民の何パーセントが有しているかを示す比率のことです。

明治維新後、行政組織は主にヨーロッパの制度を参考に、急速に近代化しました。それに伴って、国民が行政組織に対して提出する、いわゆる「申請書類」の数も膨大な数になりました。

識字率の低い明治維新直後において、国民の行政手続きをサポートしたのが、先ほどご説明した「代書人」です。これが行政書士の前身です。

IT化の進んだ現代社会でも、市役所の窓口で戸籍を請求するために「請求書・申請書」を書きますよね。

当時の「代書人」は読み書きのできない人々のために、「代わりに書く」という、まさに近代日本社会の基礎を築く使命を負っていたわけですね。

制度創設から約80年後の1951年(昭和26年)、今の呼び方である「行政書士」を定める「行政書士法」が誕生し、代書人制度は行政書士制度へと正式に移行しました。

☑結論

・行政書士の前身である代書人制度から約150年
・それから約80年後に現在の呼び方である「行政書士」に
・「行政書士」という呼び方に変更されてからさらに70年の歴史

(弁護士、司法書士もだいたい同じ歴史です。ただし社労士は歴史浅く、まだ50年ちょっと)

すごい資格でしょう?行政書士。まさに近代日本社会を支え、そしてこれからも支え続ける歴史ある資格に出会えたあなたは非常にラッキーです。

行政書士と司法書士の違い(ほとんどの一般の方は違いが分かっていません)

いまだに僕のことを「司法書士さん」と呼ぶ人たちがいます。もう20年以上行政書士やってるのにね(笑)。それだけ一般の方々には、この「行政書士と司法書士の違い」が分かりにくいのでしょう。

ちなみに「書士」と名前が付く士業は「行政書士」と「司法書士」だけです。「書士」から連想するイメージってどんなでしょうか。やっぱり「書類に強い人」みたいな感じでしょうか。

実は「行政書士」と「司法書士」のルーツは同じ「代書人(だいしょにん)制度」です。代書人制度は「①行政書士の資格の歴史」でご説明した通り、識字率の低かった1872年(明治5年)に始まった制度です。この代書人制度が1919年(大正8年)に2手に分かれました。

ア)司法代書人・・・今の司法書士の原型
イ)一般代書人・・・今の行政書士の原型

要するに、「代書人制度」は創設から約50年経って2つに細胞分裂した。それが今の行政書士と司法書士に繋がっているわけです。

では何を基準に分かれたかということに、簡単に触れておきましょう。

ア)司法代書人(司法書士)・・・法務局、裁判所、検察庁に対する書類作成
イ)一般代書人(行政書士)・・・その他の行政庁に対する書類作成

司法代書人(司法書士)の仕事が法務局、裁判所、検察庁という「限定された行政庁」に対する書類作成であるのに対して、行政書士が「その他行政庁」であるという点がミソです。

この違い、つまり

ア)司法代書人(司法書士)=業務内容が限定的
イ)一般代書人(行政書士)=業務内容が広範囲

の考え方は、非常に重要ですので是非理解しておいてください。その上で次の項目に進みましょう。

☑結論

司法書士の仕事は法務局、裁判所、検察庁に対する書類作成(つまり限定的)
行政書士の仕事はその他の行政庁に対する書類作成(つまり広範囲的)

行政書士の仕事の範囲(お伝えした通り法的書類作成の専門国家資格です)

先ほどの項目の結論部分で、「行政書士の仕事はその他の行政庁に対する書類作成」とご説明しました。

行政書士の仕事を理解する上で、この考え方は非常に重要なのです。普通はここで「行政書士法の規定」をコピペして、条文をくどくどしく説明をするのでしょうが、僕はそんな面倒なことはしません(笑)。あくまでも「読者の皆さんに分かりやすく」をモットーにしていますので、ここでも行政書士法の規定をかみ砕いて解説したいと思います。

行政書士の業務(行政書士法から要約)

ア)行政庁に提出する書類の作成、提出代理
イ)その他権利義務または事実証明に関する書類の作成

ただしア)イ)いずれの場合でも、他の法律において制限されているものを除く

他にも細かい規定はありますが、基本となるのはこれだけです。

イ)の代表例として、相続の時に必要な「遺産分割協議書」を挙げることができます。まさに法定相続人としての権利関係と事実証明を記載する書類です。

ここで言う「ただし」以下の部分について正しく理解するためには、そもそも代書人制度が、司法代書人と一般代書人に分かれた経緯をもう一度思い出す必要があります。

「代書人制度」が司法代書人と一般代書人に分かれた経緯、覚えていますか?

司法代書人(司法書士)・・・法務局、裁判所、検察庁に対する書類作成
一般代書人(行政書士)・・・その他の行政庁に対する書類作成

でしたよね。これが「ただし書き」の内容と深く関係します。行政書士法で定まっている行政書士の業務を、さらに×2かみ砕いて簡単に言うと、

行政書士業務、行政庁に提出する書類の作成と提出代理だけれども、他の法律において制限されているものを除きます

ということになるわけです。その代表例が「司法書士法で司法書士の独占業務」とされている書類(法務局、裁判所、検察庁に対する書類作成)というわけです。

このような「他の法律において制限されているもの」は他にもあります。

税理士法で税理士にしか認められない業務(税務署に対する税務申告書類)
社労士法で社労士にしか認められない業務(労基署に対する労働保険関連の書類)
弁理士法で弁理士にしか認められない業務(特許庁に対する特許出願書類)

☑結論

行政書士とは簡単に言うと法的書類作成の国家資格ですが、他士業の法律で制限されている業務を除きます

だから、行政書士の仕事は「その他全て」となり、非常に広範囲なのです。

具体的に言うと、福祉事業の指定申請、建設業の許可申請、古物商の許可申請ですが、その数は数千とも数万ともいわれています。あなた独自のカラーを出して、オリジナリティーあふれる行政書士を目指してみては?

ここがこのコラムで一番重要な部分です。ここが理解出来たら、あなたはもう行政書士マスターです。

行政書士業務として有名な分野をご紹介します

建設業許可申請
廃棄物処理業許可申請
飲食店営業許可申請
防火対象物使用開始届
風俗営業許可申請
宅建業許可申請
障害福祉事業指定申請
旅客自動車運送事業許可申請
貨物自動車運送事業許可申請
特殊車両通行許可申請
自動車運行代行業の認定申請

ご参考までに日本行政書士会連合会のリンクを貼っておきます。>>行政書士の業務(日本行政書士会連合会)

行政書士として働いている人の数(5万人くらいいます)

最後に行政書士として働いている人の数をご紹介します。行政書士会の公表資料では、約5万人もの人が行政書士として登録しています。すごい数の人が行政書士として働いていますね。単純比較は出来ませんが、

弁護士は約4万人
税理士は約8万人
司法書士は約2万人
社労士は約4万人

です。ご参考までに、>>士業登録者に占める女性比率はこちらのコラムをご参照ください。

行政書士業界もご多分に漏れず高齢化が進行しておりまして、若い行政書士のなり手確保が緊急の課題です。行政書士を目指すなら今ですよ。

コラムのまとめ

さて、それではこのコラムでお伝えしたかったことをまとめます。

行政書士と司法書士は今から約150年前にできた「代書人制度」がルーツです。代書人は1919年に2つに分離され、1951年には一般代書人が「行政書士」に、同じく司法代書人が「司法書士」になりました。

司法書士が法務局、裁判所、検察庁関係の書類作成を専門にしているのに対して、行政書士はその他行政庁全般が対象。

ただし、他法令(司法書士法、税理士法、社労士法、弁理士法など)で制限がかかっている分野を除きます。

あなたが関心のある分野で行政書士を目指しましょう。